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あなたが喜んで買ったものは、他の誰かが喜んで売ったものである。
約定とは、合意ではない。
同じ値段について、正反対の判断が出会った瞬間である。
二人とも正しいということは、ありえない。
損切りした直後に、価格が戻っていく。
あの瞬間を、あなたは何度も見ているはずだ。
偶然ではない。あなたの損切り注文が、誰かの買い注文に変わっているだけである。
本シリーズは、相場を当てる本ではない。
相場を動かしている当事者──大口投資家の動きを読む本である。
そして読むのは、動きそのものではない。その奥にある心理だ。
ただしそれは悪意ではない。大口が置かれている立場から、必然的に生じる事情のことである。
■ この巻で分かること
・なぜ、教科書どおりに置いた損切りだけが、正確に狩られるのか
・あなたの反対側に座っているのは、誰なのか
・大口は「強い」のではなく「不自由」である。彼らにも期限があり、在庫があり、評価がある
・そして最大の急所──大口は、あなたが強気にならないと降りられない
・大口の五段階(偵察・掃除・仕込み・加速・利確)
・チャートは「読む」ものではなく「作られる」もの
■ そして、いちばん大事な一行
決められるのはリスクだけ。リワードは、決められない。
損切りを置けば、そこから先の損失を止めにいく設計が、自分の側でできる。
だが利益のほうは設計できない。「1,150円まで来い」と決めても、相場は従わない。
しかも損切りは、いつも効くとは限らない。ギャップ、スリッページ、ストップ安。
損切りは損失を確定させる装置ではなく、止めにいく装置である。
だから、設計できる側だけを管理する。それがリスク管理のすべてである。
■ うまくいく話ばかりは、書かない
投資の本は、たいてい「うまくいく話」を厚く書く。勝った例、効いた形、伸びたチャート。
読んでいて気持ちがいいし、そのほうが売れる。
本書は、配分を逆にした。
理由は単純である。使える技術は、生き残っている人にしか使えない。
順序が逆になった本は、読者を退場させる。
だから、渡すものを二つに分けて書いた。
使えること(増やす側の道具) ── 板と歩み値、ローソク足の並び、節目とフィボナッチ、
大口の事情、資金の流れ、市場の構造。これらは、できなくても死なない。
守ること(減らさない側の鉄則) ── 入る前に失う額を決める/その額が二倍でも生き残る
大きさにする/大口に逆らわない/値が飛んでいる最中は入らない/根拠を一行で書けないものには
入らない/流動性のない相場はやらない/迷ったらローソク足に戻る。
こちらは、一つ外すと死ぬ。
使い方は忘れてもいい。守ることだけは、忘れてほしくない。
■ この本は、投資やトレードを勧める本ではありません
はっきり書いておきます。
・市場には構造的な傾きがあり、参加するだけで少しずつ削られます
・相手には資金も速度も情報もあり、その差は埋まりません
・リスクは設計できますが、リワードは設計できません
・そして、やらなければ一円も減りません
読み終えて「やっぱりやめておこう」と思われたなら、それは本書の失敗ではなく、
正しい読まれ方の一つです。
やる・やらないを決めるのは読者ご自身です。本書は、決めるための材料を並べています。
材料には、都合のいいものも、悪いものも、両方入れました。
■ そして、腕のいい人ほど撃たない
本シリーズが扱うのは、長く持つ投資ではなく、短めのトレードである。
日をまたがない売買、数日で決着させる売買。板と歩み値が効くのは、その時間軸だ。
だが、短期=回数が多い、ではない。逆である。
腕のいい人ほど、トレードの回数が少ない。
ハンターと同じだ。風下に回り、身を伏せ、獣道で待つ。撃つのは一日に一度あるかどうか。
撃たなかった日は、失敗した日ではない。待っていた日である。
■ 全五巻の第1巻(第1部・第2部/第1〜7章)
投資が初めての方でも読めるように書いた。専門用語は、そのつど日本語に直す。
各章の終わりに〈三つの戒め〉を置いた。迷ったら、そこへ戻ればいい。
※本書は投資助言ではありません。特定の銘柄・売買を推奨するものではありません。
本文中の数値はすべて仮設例です。
■ 正直に書いておきます
この本を読んでも、あなたは勝てるようにはなりません。
著者自身、多くの成功者に手ほどきを受けて長く学びましたが、戦績はバラバラでした。
渡せるのは必勝法ではありません。
自分の鼻で嗅ぎ分けるための「型」だけです。
答えを人からもらう習慣を持つ者は、一生「泣く側」にいます。
──銘柄も、売買タイミングも、この本には書かれていません。
書かれているのは、自分で嗅ぎ分けるための方法です。
──────────────
■ 著者の、もう一つのシリーズ
本書は繰り返し、こう書いています。
相場は、人間の欲望の記録である。そして欲望は、四千年変わっていない。
その四千年のほうを、地域別・年代別に辿っているシリーズがあります。
『信用創造の旅』(QUATTRO)
信用が、どうやって価値に変わってきたのか。粘土板の貸借から、神殿の穀物から、
教会の債務から、いまの一万円札まで。学校で教わるものとは、少し違う目線で書いています。
王の名前や戦争の年号ではなく、そのとき信用がどう膨らみ、どう縮み、誰が泣いたか。
本書を読まれた方に、とくにお勧めしたい巻を三つ。
どれも、いまの相場の話です。四百年前の服を着ているだけです。
・『チューリップと帳場』 ── 差金決済は、四百年前に球根で完成していました。
・『魂の取り付け騒ぎ』 ── 信認で立つ機関の急所は、負債でなく開示の側にある。
・『神の金庫番』 ── 王も神も信じられなくなった人が、最後に信じたのは帳簿でした。
シリーズの入口には小説を置いています。
・『いつも泣くのは中間層だ』(序巻)── 住宅ローン、月謝袋、静かに溶ける貯金。
「誰かの借金が、誰かの預金になる」を、ひとつの家の生活から書きました。
この旅は、まだ途中です。
これから先には、名前をご存じの出来事が順に出てきます。
南海泡沫、ミシシッピ計画、金本位制、世界恐慌、戦後の枠組み、金とドルの切り離し、
石油、日本のバブルとその後の三十年、リーマン、そして、いま私たちが立っている場所まで。
どれも、同じ一つの機械の話です。 膨らんで、破れて、誰かが穴を埋める。
埋めるのは、たいてい中間層でした。
Amazonで 「信用創造の旅」 または 「QUATTRO」 で検索していただければ、既刊が並びます。
──────────────
※本シリーズは全五巻です。第1部から第9部まで、第1章から第35章まで、ひと続きに進みます。
第Ⅰ巻 あなたの損切りは、誰かの買い注文である(市場の正体と、狩りの構造)
第Ⅱ巻 板は嘘をつく。歩み値は嘘をつけない(板情報と歩み値のすべて)
第Ⅲ巻 すべての指標は、この一本から作られた(ローソク足と坂田五法)
第Ⅳ巻 線は、人が集まる場所の印にすぎない(チャートの読み方)
第Ⅴ巻 お金は湧かない。移るだけである(市場構造と、資金の流れ)
※本書は投資教育を目的とし、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
本文中の数値・事例は市場の構造を説明するための仮設例、または過去の記録であり、
将来の相場を予測するものではありません。投資判断と結果は読者ご自身に帰属します。
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